「面接って、結局どこを見られているんだろう」
転職活動をしていると、誰もが一度は考えることだと思います。想定質問の答えを丸暗記して臨んだのに、手応えがないまま終わってしまった。そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。
私は今、オンライン教育会社でマーケティングとセールスの責任者をしていて、採用面接をする側に立つことが多くあります。一方で、20代のころには、大手IT企業の面接を受ける側として、かなり準備をして臨んだ経験もあります。
この記事では、面接官として実際に見ていること、よく聞く質問の裏で本当に知りたいこと、そして受ける側だったときにやってよかった準備を、正直にお話しします。
面接で「正解を言おう」とするほど、評価は下がりやすい
最初にお伝えしたいのは、面接には「全員にとっての正解」がないということです。
面接官が知りたいのは、模範解答ではなく、「この人は、うちの会社で活躍してくれそうか」です。そのため、どこかで見たような答えをきれいに話すよりも、自分の経験を自分の言葉で話す方が、ずっと伝わります。
では、その「活躍してくれそうか」を、面接官は何で判断しているのか。私が見ているのは、大きく3つの「フィット」です。
面接官が見ている3つの「フィット」

カルチャーフィット:うちの会社に合うか
1つ目は、カルチャーフィットです。会社にはそれぞれ、大切にしている価値観や雰囲気があります。その文化に合う人かどうかを、話し方や雰囲気、人柄、考え方から見ています。
たとえば今の私の会社では、成長意欲や、いろいろな経験を積みたいという気持ちをとても大事にしています。だから面接でも、その人が成長することや新しい挑戦にどれくらい前向きかを、しっかり見ています。
逆に言えば、どんなに優秀な人でも、会社の文化と合わなければ、お互いにとって不幸な結果になりかねません。カルチャーフィットは、能力の高い低いではなく、「相性」の話です。
スキルフィット:求めている仕事ができるか
2つ目は、スキルフィットです。募集している職種に必要なスキルや経験があるかどうかを見ています。
ここでよく使われるのが、「Can(できること)」「Will(やりたいこと)」「Must(やるべきこと)」という考え方です。
もちろん、経験やスキル(Can)があるに越したことはありません。ただ私は、求められる役割(Must)を理解したうえで、それをやりたいという強い気持ち(Will)があれば、今の時点でCanが足りなくてもOKにすることがあります。未経験の職種に応募する人にとっては、ここが大きなチャンスです。
キャリアフィット:その人のキャリアが、うちで描けるか
3つ目は、キャリアフィットです。私は面接で、「3年後にどうなっていたいですか」「5年後はどうですか」と必ず聞いています。
目指すキャリアは人それぞれです。中には「3年後には独立したい」という人もいます。それ自体はまったく悪いことではありません。大事なのは、その人が目指すキャリアが、うちの会社で働くことで描けるかどうかです。
会社が提供できる経験と、その人が求める経験が重なっていれば、入社後もお互いに成長できます。ずれていれば、どこかで「思っていたのと違う」となってしまいます。だからこそ、ここは丁寧に聞くようにしています。
3つに加えて大事にしていること
この3つに加えて、私が重視しているのが、明るさとコミュニケーションです。
仕事は一人では完結しません。チームで動く以上、話しやすさや、相手の話をきちんと聞いて返せるかどうかは、どの職種でも大切です。面接の受け答えの中で、会話のキャッチボールができる人かどうかは、自然と見えてきます。
特別に話がうまい必要はありません。質問の意図をくみ取って、自分の言葉で、明るく返してくれる。それだけで、印象は大きく変わります。
よく聞く質問と、その裏で知りたいこと

私が面接でよく聞く質問は、実はかなり決まっています。
- 自分の強みと弱み
- 周りの人から、どんな人だと言われるか
- 自分が成長していくうえで、必要なこと
- 将来のゴール(3年後、5年後)
- 前職を辞めた理由
- うちの会社について知っていること
- 挫折した経験と、どう乗り越えたか
- 一緒に働きたくないのは、どんな人か
この中から、特に意図がはっきりしているものを紹介します。
「うちの会社について知っていることを教えてください」
この質問で見ているのは、事前に会社のことを調べてきているかです。ビジョンやミッションまで暗記している必要はありません。でも、どんな事業をしているのか、競合はどこなのか、くらいは調べてきてほしいと思っています。
ここを調べてきている人は、それだけで「本気でうちを受けに来てくれている」と伝わります。
「挫折した経験と、どう乗り越えたか」
この質問は、必ず聞いています。なぜなら、乗り越えた経験には再現性があると考えているからです。
一度大きな壁を乗り越えた人は、入社後に壁にぶつかったときも、きっと乗り越えられる。そして、その経験が重く、つらいものであるほど、乗り越えられることの幅も広がっていくと思っています。だから、きれいな成功談よりも、どう苦しんで、どう抜け出したかを聞きたいのです。
「3年後、5年後にどうなっていたいですか」
先ほどのキャリアフィットを確かめるための質問です。立派な目標を言う必要はありません。今の時点で考えていることを、正直に話してもらえれば十分です。
残りの質問に答えるときのコツ
ほかの質問についても、答えるときのコツを簡単にまとめておきます。
「前職を辞めた理由」は、前の会社の不満だけで終わらせないことが大切です。不満があったとしても、「だから次はこういう環境で、こういうことに挑戦したい」と、前向きな理由につなげて話すと伝わりやすくなります。
「強みと弱み」や「周りからどんな人と言われるか」は、具体的なエピソードとセットで話すのがポイントです。「粘り強いです」と言うより、「こういう場面で、こうやって粘りました」と話した方が、ずっと説得力があります。
「一緒に働きたくない人」は、誰かの悪口にならないよう、「自分はこういう姿勢を大事にしているので、その反対の行動には違和感がある」という形で、自分の価値観を伝える質問だと考えると答えやすくなります。
「惜しいな」と感じてしまう瞬間
反対に、面接で「惜しいな」と感じてしまうこともあります。
一番多いのは、労働条件の話しかしないケースです。福利厚生はあるか、給与はいくらか、リモートで働けるか。もちろん、どれも大事なことですし、聞いてもらって構いません。
ただ、質問がそこだけで終わってしまうと、「この人は、うちの事業にはあまり興味がないのかな」「うちで何をしたいんだろう」と感じてしまいます。条件を確認するのは、仕事の中身について話したうえで、という順番を意識するだけで印象はかなり変わります。
どうしても条件面で確認したいことがある場合は、「長く働きたいと考えているので、働き方について伺ってもいいですか」のように、理由を添えて聞くのがおすすめです。同じ質問でも、仕事への前向きさが伝わります。最終面接や内定後の面談で確認する、というのも一つの方法です。
逆質問は、評価を上げる大きなチャンス

面接の最後にある逆質問を、私はとても大事に見ています。むしろ、逆質問は評価を上げる大きなチャンスだと思っています。
良い逆質問は、入社して働いている自分をイメージした質問です。たとえば、次のような質問です。
- 会社がこれから向かっていく方向性
- 入社したら、どんなKPI(目標の数字)を追うことになるのか
- 一緒に働くのは、どんな人たちか
- 実際の業務の進め方
印象に残っているのは、「3年後のビジョンはありますか」「会社として、どこに向かっているんですか」と聞かれたときです。「この人は、ずいぶん先まで見ているんだな」と感じました。
逆に、給与や福利厚生の質問だけで終わる逆質問は、先ほどと同じ理由で、少しもったいなく感じます。逆質問も、結局は質問の中身が大事なのです。
ケーススタディ:準備した答えを読み上げたAさん
ここからは、よくあるパターンを2つ紹介します。実在の人物ではなく、面接で起きやすい流れをまとめたものです。
Aさんは、面接対策の本やサイトを読み込み、想定質問への答えを完璧に準備して面接に臨みました。強みも、志望動機も、挫折経験も、きれいな言葉で話すことができました。
ところが、面接官に「その経験で、具体的にどんなことを工夫しましたか」と深掘りされると、言葉に詰まってしまいます。準備した答えはどこかで見たような内容で、Aさん自身の経験とつながっていなかったのです。逆質問では、福利厚生と残業時間について聞いて、面接は終わりました。
ケーススタディ:経験を自分の言葉で話したBさん
Bさんは、答えを暗記するのではなく、自分の経験を振り返ることに時間を使いました。うまくいかなかった仕事を、どう立て直したのか。そのとき何を考えていたのか。
面接では、言葉は少し不器用でも、具体的なエピソードを自分の言葉で話しました。事前に応募先の事業や競合も調べていたので、「御社のこのサービスで、自分の経験をこう活かしたい」と伝えることができました。逆質問では、「入社したら、最初の半年でどんな成果を期待されますか」と聞きました。
2人の違いは、話のうまさではありません。自分の経験と、相手の会社を、どれだけ深く理解していたかです。
私が面接を受ける側だったときに、やってよかった準備
ここからは、私自身が面接を受ける側だったときの話です。
大手IT企業を受けたとき、私はかなり準備をしました。その会社のサービスについて書かれた本を書店で買って読み込み、自分が扱うことになるであろうプロダクトを、面接の前にしっかり理解するようにしました。社長がどんな人なのか、どんな考えを発信しているのかも調べました。
そのうえで面接では、「これまでこういうことをやってきました」「その経験を活かして、このプロダクトでこういうことができると思います」と、自分の経験と、その会社でやりたいことをつなげて話しました。経験だけでなく、「それくらい本気で、ここで働きたいと思っている」という意欲も、一緒に伝えたかったのです。
面接官になった今振り返ると、あの準備はまさに、面接官が見ているポイントをそのまま押さえていたのだと思います。会社を理解していること、自分のスキルがどう活きるかを説明できること、そして意欲があること。カルチャー、スキル、キャリアの3つのフィットを、自分から示しにいく準備だったと言えます。
ちなみに、エージェントの担当者には「受かりにくいと思いますよ」と言われていた会社でした。この話は「転職エージェントの使い方」で詳しく書いています。
面接の前日にやっておくこと
最後に、面接の前日にやっておきたいことをまとめます。
- 応募先の事業内容と、主な競合を3社書き出す
- 自分の「強み」を、それを証明するエピソードとセットで1つ用意する
- 挫折した経験と、どう乗り越えたかを、時系列で書き出す
- 3年後、5年後にどうなっていたいかを、それぞれ一文で書く
- 「入社して働く自分」をイメージした逆質問を、3つ用意する
答えを暗記する必要はありません。書き出しておくことで、頭の中が整理され、当日は自分の言葉で話しやすくなります。
未経験の職種に挑戦する人は「未経験からマーケターに転職できるのか」、スクールで学んでから転職を考えている人は「AIスクールの転職実績の見方」もあわせて読んでみてください。
まとめ:今日やること
面接官が見ているのは、模範解答ではなく、「この人がうちで活躍している姿を想像できるか」です。そのために、カルチャー、スキル、キャリアの3つのフィットを、自分の経験と言葉で伝えることが大切です。
今日から、次のことをやってみてください。
- 応募したい会社の「大事にしている価値観」を、採用ページや社長の発信から1つ見つける
- 自分のCan(できること)、Will(やりたいこと)を、それぞれ3つずつ書き出す
- 3年後、5年後の自分を、一文ずつ書いてみる
- 挫折した経験を1つ選び、どう乗り越えたかを書き出す
- 条件以外の逆質問を、3つ考えておく
面接は、評価される場であると同時に、自分に合う会社かどうかを確かめる場でもあります。準備をした分だけ、その会社で働く自分の姿が、相手にも自分にもはっきり見えてくるはずです。

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