X(旧Twitter)を開くと、似たような投稿が流れてくる。
「月4万円で頭打ちだった僕が、AIを使って月19万円に」 「顔出しなし、毎日更新なしで、これだけ稼げました」 「実は、みんなが思っているほど大変じゃないんです」
数字も商材も毎回違うのに、なぜか読んだ後の感覚がいつも同じだ。「これって詐欺なのか、本当なのか」と迷ったことがある人も多いと思う。
結論から言うと、この手の投稿の大半は、詐欺と呼べるほど悪質ではない。ただし、書かれている数字を鵜呑みにしていい情報でもない。その境界線がどこにあるのか、マーケティングの実務に10年近く携わってきた立場から、投稿の「型」を分解しながら考えてみる。
未経験からマーケティングの現場に立った経験から言えること
僕自身、最初からマーケティングの専門知識があったわけではない。新卒で入った会社では、法人向けの飛び込み営業を1日100件近くこなす日々だった。その後、代理店営業を経て、未経験のままオンライン事業の立ち上げに携わることになり、そこで初めて広告運用やSEO、SNS運用といったマーケティングの基礎を実地で学んだ。
この経験から言えるのは、**「人を動かす文章には、再現性のある型がある」**という当たり前の事実だ。今回取り上げるAI副業系のX投稿も、同じ理屈で書かれている。型自体は業界の常識であって、悪意の証拠ではない。問題は、その型を知らない読者が、書かれている内容をそのまま信じてしまうことにある。
4つの型が、毎回同じ順番で出てくる
これらの投稿を10本ほど並べて読み比べると、構成要素がほぼ共通していることに気づく。
1つ目は、思い込みの否定から入る冒頭だ。
「アフィって、毎日更新しないと死ぬやつでしょ」「アマゾンって報酬率低いから稼げないでしょ」——読者が漠然と持っている先入観を、まず言葉にして代弁する。この一文があるだけで、読者は「まさにそう思ってた」と自分ごと化して読み進めてしまう。営業の現場で言えば、警戒しているお客様に対して、こちらから先に「値段が高いと思われていますよね」と切り出すのと同じ構造だ。
2つ目は、具体的な数字だ。
「月4万円→19万円」「1か月目は0円」のように、あえて低い数字や失敗も含めて出す。全部が成功談だと胡散臭くなるが、停滞期や0円の期間を混ぜることで、逆に信憑性が上がる。これは意図的な設計であることが多い。
3つ目は、失敗談の告白だ。
「報酬額の高い商品ばかり選んで失敗した」「新製品のジャンルに寄せすぎて埋もれた」。うまくいった話だけでなく、遠回りした過程を見せることで、「この人は実際にやっている」という実在感を作る。
4つ目は、無料特典への誘導だ。
最後は決まって「LINE登録で無料プレゼント」「定員に達し次第終了」という一文で締められる。ここまで積み上げた信頼を、連絡先の獲得に変換する。
なぜこの型は「詐欺」と紙一重に見えるのか
種明かしをすれば身も蓋もないが、これは偶然できた型ではない。「読ませて、信じさせて、連絡先を取る」という、コピーライティングの基本構造をそのまま踏襲している。
冒頭の否定は、読者の注意を掴むためのフック。数字と失敗談は、信頼を積み上げるための社会的証明。そして最後の特典は、その信頼を数字に変換するための出口だ。この3つが1セットになっているからこそ、内容が変わっても「読ませる力」は毎回再現される。
これ自体は悪いことではない。人を動かす文章の型として、実務でも普通に使われている手法だ。詐欺との違いは、型の有無ではなく、書かれている数字や実績に、最低限の裏付けがあるかどうかにある。
詐欺っぽさを見分ける3つのチェックポイント
この手の投稿を目にしたとき、内容の真偽を1つずつ検証するのは現実的ではない。ただ、次の3点だけ意識すると、判断の精度が上がる。
① その数字は、誰が検証したものか
多くの場合、本人の自己申告だけで、第三者による裏付けはない。数字自体を否定する必要はないが、「参考情報」として受け取るのと「事実」として受け取るのとでは、その後の判断が変わってくる。特に「月◯◯円達成」という表示の横に、入金明細や振込画面のスクリーンショットなど、裏付けとなる資料が一切ないケースは注意した方がいい。
② 失敗談は、本当に失敗として機能しているか
「最初の1か月は0円でした」という告白は、多くの場合むしろ信頼を上げる方向に働く。失敗談が書かれているからといって、それだけで誠実な投稿だと判断するのは早い。本当に注意すべきは、失敗談の後に必ず「でも、こうしたら解決した」という都合の良い転換が用意されている場合だ。現実の失敗は、そこまで綺麗に回収できないことの方が多い。
③ 最終的な着地点はどこか
投稿の最後まで読んで、何に誘導されているかを確認する。「無料プレゼント」の先が、単なるメルマガ登録なのか、それとも高額な有料商品の販売ページにそのままつながっているのか。着地点を確認するだけで、その投稿がどんな設計で書かれているかがある程度逆算できる。無料特典自体が悪いわけではないが、その先に何が待っているかを知った上で登録するのと、知らずに登録するのとでは、リスクの大きさが変わる。
型を知ることは、読む側にも書く側にも役立つ
この型を分解する作業は、読み手として身を守るためだけのものではない。実際に情報発信をする側に回ったとき、同じ構造を理解しているかどうかで、書ける文章の質が変わってくる。
型そのものは、読者を騙すための道具ではない。「何に困っている人に、何を伝えるか」を整理した結果、自然とこの形に収束しているだけだ。型を知らずに書くと、思いつきの順番で情報を並べてしまい、読者に伝わる前に離脱される。型を知った上で、そこに何を載せるかを考える方が、結果的に誠実な文章になる。
次にAI副業系の投稿を見かけたら、まずこの4つの型に当てはめてみてほしい。冒頭で否定されている思い込みは何か、数字に裏付けはあるか、失敗談の後の転換は都合が良すぎないか、最後にどこへ誘導されているか。この4つを順に確認するだけで、「詐欺かどうか」を感覚ではなく、根拠を持って判断できるようになる。
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