「転職成功率98%」「卒業生の95%がキャリアアップに成功」。
AIスクールの公式サイトを見ていると、こんな数字がずらりと並んでいます。ここまで高いなら、自分も通えばなんとかなるかもしれない。そう感じるのは、とても自然なことです。
ただ、オンライン教育の事業に関わってきた立場から正直に言うと、この数字は「スクール同士でそのまま比べられるもの」ではありません。数字が嘘だというより、計算のルールがスクールごとにバラバラで、しかも各社に都合のいい形で決められていることが多いからです。
さらに私は、マーケティングやセールスのチームで採用面接をする側でもあります。「スクールを卒業しました」という応募者に、実際に何人も会ってきました。
この記事では、スクールを作る側と、人を採用する側。この2つの視点から、AIスクールの転職実績の読み方を解説します。読み終えるころには、公式サイトの数字に振り回されず、「自分にとって意味のある実績かどうか」を自分で判断できるようになるはずです。
「転職成功率98%」をそのまま信じない方がいい理由
まず結論から言います。転職成功率の数字は、スクールを選ぶ材料の一つにはなりますが、決め手にするには不十分です。
理由はシンプルで、「何を転職成功と呼ぶのか」「誰を数えるのか」に、業界共通のルールがないからです。
たとえば、98%と95%の2つのスクールがあったとします。普通に考えれば98%の方が優秀に見えます。でも、もし98%のスクールが「転職サポートを最後まで使い切った人だけ」を数えていて、95%のスクールが「受講生全員」を数えていたとしたらどうでしょう。実際の中身は、95%の方がずっと良い可能性があります。
作る側から見ていて感じるのは、数字を高く見せる工夫そのものよりも、その「ロジックが本当にバラバラ」だということです。分母と分子の決め方が会社の都合で決まっているので、外から見ている受講希望者には、数字の信用性を判断する材料がほとんどありません。
だからこそ、数字の大きさではなく、数字の「作り方」を確認する必要があります。
転職実績の数字は「分母」と「分子」で決まる

転職成功率は、ざっくり言えば「転職できた人(分子)÷対象になった人(分母)」です。この2つのどちらをいじっても、数字は大きく変わります。
分母から外れやすい人
分母を小さくすれば、成功率は上がります。一般的に、次のような人は「対象外」として分母から外れているケースがあります。
- 途中で受講をやめた人
- 卒業はしたが、転職活動をしなかった人
- スクールの転職サポートに申し込まなかった人
- 決められた期間内(たとえば卒業後3か月)に転職活動を始めなかった人
一つひとつは、それなりに理屈が通っています。転職する気がない人まで数えるのはおかしい、という考え方もあるでしょう。ただ、これらを全部外していくと、残るのは「最後まで走りきった、もともと意欲の高い人」だけです。その人たちの成功率が高いのは、ある意味で当然とも言えます。
分子に入りやすい「転職」
逆に、分子を広げれば成功率は上がります。たとえば、次のようなケースも「転職成功」に数えられていることがあります。
- 学んだスキルとは関係のない職種への転職
- 正社員ではなく、契約社員や業務委託での就業
- 社内異動や、副業で単発の案件を受けたケース
- 年収が下がった転職
あなたが「AIを使う仕事に、正社員として転職したい」と考えているなら、こうした数字が混ざった98%は、あなたにとっての成功率ではありません。大事なのは、全体の成功率ではなく、「自分と同じ条件の人が、自分の望む形で転職できたか」です。
公式サイトの転職実績を見るときの5つのチェックポイント

では、実際に公式サイトを見るとき、どこを確認すればいいのか。最低限、次の5つを押さえておけば、数字の見え方がかなり変わります。
1つ目は、算出の条件が書いてあるかです。成功率の近くに、小さな文字で「※転職サポート利用者のうち」「※2025年度卒業生」などの注記がないか探してください。条件が一切書かれていない数字は、比較の材料としては弱いと考えた方が安全です。
2つ目は、母数(人数)が書いてあるかです。「98%」と「50人中49人」では、受け取る印象が違います。人数が書かれていれば、どのくらいの規模の実績なのかが判断できます。
3つ目は、転職先の職種と雇用形態です。「IT企業へ転職」と書いてあっても、職種が営業なのか、エンジニアなのか、AIを使う企画職なのかで意味が変わります。具体的な職種名や事例が出ているかを確認しましょう。
4つ目は、受講前の経歴です。成功事例に出てくる人が、もともとIT業界にいた人ばかりではないか。未経験から転職した事例がどのくらいあるのかは、未経験の人にとって一番知りたい情報のはずです。
5つ目は、いつの実績かです。AIの分野は変化が速いので、数年前の実績が今も通用するとは限りません。集計した年度が書かれているかも見ておきましょう。
この5つのうち、答えが見つからないものが多いほど、その数字は「広告のためのキャッチコピー」に近いと考えてください。
同じ「転職したい」でも結果が分かれる2つのパターン
ここからは、よくあるパターンを2つ紹介します。実在の特定の人物ではなく、スクール選びで起きやすい流れを例としてまとめたものです。
ケーススタディ:成功率の数字で選んだAさん
Aさんは、事務職からAIを使う仕事へのキャリアチェンジを考えていました。いくつかのスクールを比べた結果、一番成功率が高かった「転職成功率98%」のスクールに決めます。
受講は順調で、卒業後に転職サポートを使って活動を始めました。ところが、紹介される求人は、AIとはあまり関係のない営業職や、契約社員の求人が中心でした。
あとから注記を確認すると、成功率は「転職サポートを利用し、紹介求人に応募した人」が対象で、職種や雇用形態は問われていませんでした。Aさんが望んでいた形の転職は、その98%の中にはあまり含まれていなかったのです。
ケーススタディ:中身を確かめて選んだBさん
Bさんも、Aさんと同じように未経験からのキャリアチェンジを考えていました。ただBさんは、成功率の数字ではなく、無料相談で「未経験からAI関連職に転職した人は何人いて、どんな職種についたのか」を質問しました。
あるスクールは具体的な職種と人数を答えてくれましたが、別のスクールは「個人情報なので」と曖昧な答えしか返ってきませんでした。Bさんは、成功率は少し低くても、具体的に答えてくれた前者を選びます。
さらにBさんは、スクールの転職サポートだけに頼らず、転職エージェントにも並行して登録しました。結果として、希望に近い職種で内定を得ることができました。
2人の違いは、能力ではありません。数字の「中身」を確認したかどうかです。
採用する側は「スクール卒」をどう見ているのか

ここからは、採用面接をする側としての本音をお話しします。
正直に言うと、「スクール卒です」という応募者を見たとき、最初に思うのは「実務経験はまだないんだな」ということです。スクールで学んだことと、仕事で成果を出したことは別物なので、そこは冷静に見ています。
ただ、それで評価が下がるわけではありません。スクール卒だからダメ、ということは一切ありません。
むしろ私は、「スクールに通うくらい、キャリアを変えたいと本気で思っている人なんだ」「お金と時間を使ってでも学ぶ意欲がある人なんだ」というところから入ります。そのうえで、面接では次のような点をかなり細かく見ています。
- 学んだことを、自分の言葉で説明できるか
- 受け答えの素直さや、話の組み立て方
- わからないことを、自分で調べて解決しようとする姿勢
- 入社後に伸びていきそうな成長意欲
つまり、採用する側が見ているのは「どのスクールを出たか」ではなく、「そこで何を学び、どう考え、これからどう伸びていく人なのか」です。
これは、スクール選びにもそのままつながります。転職実績の数字が高いスクールを選ぶことよりも、面接で自分の言葉で語れる経験が積めるスクールかどうかの方が、よほど大事です。課題で何かを作る機会があるか、自分の成果物として見せられるものが残るか。そこまで確認できると、選び方の精度が上がります。
もう一つ付け加えると、面接で好印象につながりやすいのは、「スクールで習ったこと」をそのまま話す人ではなく、「習ったことを使って、自分で何を試したか」を話せる人です。たとえば、学んだAIツールを使って今の仕事の作業時間を減らしてみた、身近な人の困りごとを小さく解決してみた。規模は小さくても構いません。自分で考えて動いた経験は、受け答えの具体性にそのまま表れます。スクールを選ぶときは、受講中にそうした「試す場」をどれだけ作れそうかも、あわせて考えてみてください。
無料相談で実績の中身を確かめる質問
公式サイトで分からなかったことは、無料相談で直接聞くのが一番確実です。次の質問をそのまま使ってみてください。
- 転職成功率の分母は、受講生全員ですか?それとも一部の人だけですか?
- 途中でやめた人や、転職活動をしなかった人は、どう扱っていますか?
- 「転職成功」には、どんな職種や雇用形態が含まれていますか?
- 未経験からAI関連の職種に転職した人は、直近1年で何人いますか?
- 卒業生は、どんな職種に転職していることが多いですか?
- 転職サポートでは、どんな求人を紹介してもらえますか?
- 卒業時に、面接で見せられる成果物は残りますか?
ここで大切なのは、答えの内容そのものよりも、答え方です。具体的な数字や事例で答えてくれるスクールは、自分たちの実績に自信があり、誠実に向き合っている可能性が高いと言えます。逆に、質問をはぐらかしたり、「今申し込めば割引です」と話をそらしたりするなら、少し立ち止まって考えた方がいいでしょう。
料金の確認ポイントや、相談時に使える質問は、「AIスクールの料金比較の記事」でもまとめています。あわせて使うと、相談の時間をムダにしません。
そもそも転職目的でAIスクールに通うべきか
ここまで読んで、「そもそもスクールに通う必要はあるのか」と感じた人もいるかもしれません。
私自身の話をすると、転職するときはリクルートエージェントのような転職エージェントを使っていました。そして、営業からWebマーケティングへキャリアチェンジしたときは、スクールや講座には通っていません。基本はYouTubeなどを見ながらの独学でした。
一方で、英語についてはオンライン英会話をいろいろ試しています。前職の福利厚生でレアジョブ英会話を受けられる制度があったので使っていましたし、ネイティブキャンプなども試しました。正直なところ、どれが一番かを決めるまでに、かなりの数のレッスンを「お試し」に費やしました。迷い続けるのも、ある意味で一つのスキルかもしれません。
この経験から言えるのは、スクールは「全員に必要なもの」ではなく、目的と状況によって向き不向きがあるということです。
- 一人でも学習を続けられて、調べる力がある人は、独学から始めても十分間に合う
- 転職先探しそのものは、スクールのサポートに頼りきらず、転職エージェントを併用した方が選択肢が広がる
- 一人だと続かない人や、質問できる相手がいないと止まってしまう人は、スクールの価値が大きい
独学とスクールの分かれ目については、「AIスクールと独学、結局どっちがいいのか」で詳しく解説しています。スクールに通うと決めた人は、「AIスクールの選び方」もあわせて読んでみてください。
まとめ:申し込む前に、今日やること
AIスクールの転職実績は、数字の大きさではなく「作り方」で見るのが基本です。最後に、今日からできることをまとめます。
- 気になるスクールの公式サイトを開き、転職成功率の近くにある注記を探す
- 5つのチェックポイント(算出条件・母数・職種と雇用形態・受講前の経歴・集計時期)をメモに書き出し、答えが見つからないものに印をつける
- 印がついた項目を、無料相談でそのまま質問する
- 具体的に答えてくれたスクールだけを、候補として残す
- スクールと並行して、転職エージェントにも1社登録しておく
採用する側から見ても、スクール卒であることは決してマイナスではありません。大事なのは、そこで何を学び、自分の言葉でどう語れるかです。
数字に選ばれるのではなく、自分で数字を読み解いて選ぶ。その一歩が、遠回りしないキャリアチェンジにつながります。


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